今回の就職活動の最終日、もりぞおさんは友人にジャカルタ周辺の工業団地に連れて行って貰いました。前日から「明日は、なんかデモあるみたいだから、もしかしたら中止になるかも」と言われてたのですが、デモの中心地はジャカルタから2時間くらい離れたところなので、多分大丈夫であろうということでとりあえず、出発。

行きの高速道路の上で遠くの工業団地でデモが始まったとのニュースを聞き、近くの工業団地だけ行って昼のイスラム教のお祈りの時間を見計らって帰ることが決定しました。

今回のデモの経緯はこんな感じです。
1.ジャカルタ周辺のブカシ市の市長が「最低賃金を3割上げる!」という法案にサインした
2.経営者組合が「そんな無茶苦茶な法案通すなんてけしからん!」と裁判所に提訴した
3.裁判所が「経営者の言い分が正しい!」と法案の取消を命じた
4.その判決を聞いて労働組合が「裁判所と経営者組合なめんな!」とデモを起こす

このブカシ市が遠くだったので、まあ、この辺まで飛び火することはないだろう(なにせ、ブカシ市以外の労働者にはこの最低賃金引き上げは何も影響しない)ということで甘く見ていたのですが。。。

10時過ぎについて1時間半ほど滞在して、外に出てみると、あらたいへん。

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明らかに異常な量の原チャリが道を占拠しており、不穏な空気が流れています。

「やべえ。これは速く帰らないと・・」ということで、急いで高速道路の入り口に向かったのですが、既に高速道路はデモの拡大を防ぐために封鎖されています。

「やってもうた。。ほとんどの日本企業はもう既に仕事なしで社員を帰宅させたらしい」

 まあ、高速道路に入れないんじゃどうしようもないので、しばらく近所の小洒落た日本料理屋でランチタイム。カツカレー食って、オレンジジュース飲んで、iPhone使ってtwetterで実況しながら実況したりしながら時間を潰してたのですが、どうも収まる気配が見えないので、外に出てみることにしました。
 
 わー!工場占拠されてるー!
 
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 従業員追い出されてるー!
 
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 工場的にみると、かなり大変なことになっているということが分かります。
しかし、参加している人々の様子を見ると、別に暴れるわけでもなく、投石や火炎瓶もなく、ただみんなダラダラとだべってたり原チャリで走ってたりするだけです。
 
 デモの様子を一生懸命デジカメで撮ってる人や
 
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 楽しそうに週末の予定について話をしている人たち
 
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 など、緊迫感のないデモです。
 
 と、いうのも、このデモ、所詮労組の一部の煽り屋が主導しているモノであり、一般従業員はあんまり気にしてないみたいなんです。(この辺の工場の従業員には関係のない話だし)
 ただ、デモに参加してないと、あとから嫌がらせされたりするので、仕方なく参加しているとか。(まあ、仕事サボれてラッキーかもしれませんが)
 
 とはいえ、なんかのきっかけで暴動とか起こっても困るので、仕方がなく、高速道路を通らないで帰ることにしました。スマートフォンでGoogle Map見ながら「この村を突っ切れば帰れそうだ!」というのを発見して、そちらに向かいます。
 しかし、その村がまたハードでした。
 
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 道路が舗装されていないのはもちろんですが、完全にオフロード。
 こんな道通れるのは、オフロードカーか牛ぐらいだろ!って道を2時間くらい走り続けることに。。ジャカルタ1時間も行かないところ、工業団地のすぐ側にこんなところがあるのがインドネシアの現実です。
 
 実際、今回みたいに賃上げが頻発するのも、こういう村の存在が関わってきています。
 日本人的に考えると、人口が2.4億人もいて多くの人が貧困層なので工場の労働力となる人材は山ほどいるわけで、賃上げなんていらんだろと思うのですが、こういう村の人たちの多くは最終学歴が小学校だったりするのです。
 
 読み書きができないのはもちろん、インドネシア語が喋れるかも微妙。さすがに、工場労働者として使うにも難しいレベルの人たちなのです。従って、貴重な存在である高校卒業以上の教育を受けている人は既に奪い合いになっており、強気の労働者が賃上げを要求したり、今回のようにデモを起こしたりしているわけです。
 
 元々賃金が安いことが原動力となって工場が次々に建てられているインドネシアですが、そのメリットは少しずつ崩れているのです。
 とはいえ、それですぐにインドネシアの産業が衰退するかというとそんなことはありません。こういう村に住んでいる人の中で、高校卒業した人が比較的高い賃金を得るようになれば、その金で工業製品を買うようになります。実際にこんな村の小さな売店でも携帯電話は売っています。
 
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 それ故に、2.4億人のこの国の市場規模はこれから大きく発展していくことは確実であり、この国で商売をすることのメリットは増大するばかりです。
 さらに、そうして豊かになった人たちは自分の子どもの教育にも投資するので、次世代の教育水準は上がります。つまり、優秀な労働者が増えてきて、工場で作れるモノのレベルが上がっていくのです。
 実際この現象は、中国やタイでは既に起こっており、一部工場の行員のレベルは日本の工場に遜色のないレベルになっています。
 
 安い労働力を求めて外資による工場ができ、その工場で働いた金で労働者がモノを買い、その需要を満たすため外資・国内の企業がさらに投資をし、さらに沢山稼いだ人たちが子どもに投資をし優秀な人材を育て、その人材を使って企業がさらに高度なモノを作る工場を作る
 
 こんな、スパイラルが起こっているのが発展途上国であり、そのスパイラルのスタートラインにいるのがインドネシアなのです。
 そして、今回3割の賃上げを要求していると言っても、現在の最低賃金は月給1万円。日本の賃金の1/20程度です。
 まだまだ大きな隔たりがあるのが現実であり、このインドネシア人と日本人の格差が是正されるにはまだまだ時間がかかりそうです。きっとその均衡点は、インドネシア人の賃金が10倍になり、日本の賃金が1/2になる、月給10万円ってとこなんじゃないかと思うわけです。
 
 その頃には、この村に舗装道路が引かれていることはもちろん、モノレールの駅ができて、駅の側にはショッピングモールが出来ちゃったりして、こんな露天ではなく家電量販店でiPhoneを買っているかもしれません。
 
 インドネシア就職の魅力は、そんな変化をリアルタイムで見ることができること。場合によってはその変化の一端を担えることだと思います。日々豊かになっていく人々は、便利になっていく街を見ながら生活するという感覚。その高揚感の中に身を置く快感。
 インドネシア就職は、物質的な豊かさよりも、そんな精神的な満足感がプライスレスな価値なのではないかと思う訳です。
 
 ちなみに、我々は2時間かけてこの村のオフロードを乗り越え、その後地獄渋滞に3時間ほど巻き込まれて5時間くらいかけてジャカルタ市街に帰りました。マジではやくモノレール作ってくれ。インドネシア政府、ホント、しっかりしろ!
 
 なお、デモの結果、経営者組合は提訴を取り下げて、最低賃金はめでたく3割上がったそうです。