海外で働いている人のドキュメンタリーが一部界隈で話題になっており、私なりの感想および海外で働く事について考えたことを書いてみます。

この番組は、フジテレビの深夜のドキュメンタリー。
中国の大連で働く日本人たちを追った番組です。

http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/21th/12-296.html

日本でパソコンの操作法が分からないときなど、0120のフリーダイヤルから電話をかけると、日本語で応対してくれます。しかし、それがかかっている先は、時として中国だったり、タイだったりします。日本以外の国に住んでいる日本人が応対をしているのです。

このドキュメンタリーでは、コールセンターで働いている人を中心に、中国の大連で働く人が紹介されます。

1. 中国・大連でコールセンター勤務 張替禎史さん(37) 月収約10万円
  大学院卒業後日本で派遣社員→大連で働き始めて3年目。
  中国人の彼女がいる。

2. 中国・大連 飯田さん(仮名)(38)月収6万円
  日本で警察官→警備会社→体調を崩してフリーター→大連でデータ入力。
  切り詰めた暮らしをしているが、日本に帰る旅費が貯まらない。
  ただ、日本にも中国にも知り合いはあまりいない。

3. 中国・大連でHP制作会社を企業 明田智典さん(37)月収8万円
  我の強い中国人スタッフと日本の顧客の板挟みで過労となり、入院。

なんか、どれを見ても非常に辛そうな、とても暗い気持ちになるドキュメンタリーでした。
しかし、twitterとかで他の人の感想とかを読みながら改めて振り返ってみると実はそうでもないのでは…と思い、再度見返してみました。

結論から言うと、この番組の暗さは、演出でした。

低い声のナレーションと、悲しげな音楽、暗い画面、絶望的な番組ロゴ。

しかし、そのような演出を取っ払ってみると、彼らは必ずしも不幸とは言えない気がします。

1. 張替さんは、ものすごく立派なタワーマンションに住み、中国人の彼女もいる。友達と日系居酒屋に行き、日系高級美容院で髪を切り、不自由のない生活をしている。

2. 飯田さんは、この中で一番悲惨だけど、それでも日本で働いているときよりもお金の心配はなくなったといっている。

3.明田さんも、起業時の苦労や自分の生活の切り詰めはどこの国でも一緒だし、番組最後では会社が大きくなり軌道に乗ったことを臭わせている。

あ、結構これは悪くないんじゃないか。。


ただ、私自身は、ただ日本語だけで仕事ができるという理由だけで、海外のコールセンターで働く事はあまりおすすめしていません。
その理由は、張替さんの彼女(日本語ペラペラの中国人)が言っていることと同じです。
「同じチームのほとんどの日本人は、日本語以外特に技術はないよね。
これから日本語しか分からない日本人は、中国でも働きづらくなるよね。」

張替さんがタワーマンションに住んでいることからも分かるように、大連では「日本語が話せる日本人」であるだけで現地の人よりもずっと高い給料をもらうことができます。
しかし、現地の中国人もタワーマンションに住みたいわけで、猛烈な勢いで日本語を勉強する。そして、日本に行ったこともないのに、非常に上手な日本語を話す人が増えているのです。
あと何年かしたら、大連のコールセンターの仕事は、彼女らの様なアグレッシブな中国人にとられてしまうでしょう。その時、張替さんは…。

今、日本をはじめとする先進国から仕事が消えている理由のひとつは、豊かになりつつある国の人々に仕事を奪われているからです。
物流効率が上がりモノの移動が容易になり、インターネットにより金と情報が一瞬で世界中を駆け回るようになった21世紀には、仕事は簡単に国境を越えて出て行きます。

まだ、平均年収が低い途上国にも優秀な人はたくさんいて、彼らが先進国の人しかできなかった仕事を次々とこなしています。
コールセンターの仕事はまさにこれで、今までは「日本国内で日本人しか出来なかった」仕事が、コストダウンのため「日本国外で日本人がする仕事」となり、いずれ「日本国外で外国人がする仕事」となるわけで、今はその過渡期にあたります。

過渡期であるが故に、海外で働く日本人は「日本国内の日本人」と「日本国外の外国人」の中間くらいの給料をもらうことができ、日本国外でリッチな生活が出来る。
これが、短期的な海外就職のメリットです。

しかし、私はこの短期的なメリットだけをみて行くことに賛成はしていません。
なぜなら、海外で働く事は短期的なメリットを享受しながら、もう一つ上を目指すチャンスでもあるからです。
つまり、「日本国外で働いた経験のある日本人しかできない仕事」を身につけるべきだと思うのです。

例えば、中国語をビジネスレベルまで身につけ、中国人をマネジメントできる日本人はまだ多くありません。
しかし、中国人と一緒にビジネスをしたい日本企業は無数にあり、その中に「マネージャは日本人の方が安心」と思っている企業はたくさんあります。

中国で働きながら中国語を覚え、コールセンターの中でマネージャ的ポジションを射止めたり、中国にある日系または現地企業に転職して中国人をマネジメントする経験を積むチャンスはたくさんあります。

この経験を売りに、日本のより待遇の良い企業にキャリアアップをしたり、さらにレベルを上げ、英語も覚え、日本以外の国の企業に転職するチャンスもあるでしょう。

せっかく海外まで仕事をしに行くのであれば、いつ中国人に奪われるか分からないポジションで将来に不安を感じながら生活するよりも、現地にいるからこそ身につけられるスキルを身につけるために努力し、自分で道を切り拓いた方が楽しいのではないかと思うわけです。

私は「アジア転職読本」の中で、海外で働いている人の事例を入れる際にタイでコールセンターをやっていた人の事例を載せました。ただ、彼は、コールセンターで働いているときに一生懸命タイ語を勉強し、3年でビジネスで使えるレベルまで持っていき、大手日系企業に転職しています。

もちろん、全ての人がそうすべきかは分からないし、努力をしても成果が出ない人もいるでしょう。でも、海外就職を「一時的な逃避」にするのではなく、「階段を駆け上がるチャンス」と捉えて、飛び出す人が増えたら、それは将来の日本の発展にも繋がると思います。

「サヨナラ、ニッポン」というタイトルはやっぱりさみしい。
「向こうで大きくなってくるから」と言って海外に行けるような就職の方法を私は探していきます。

アジア転職読本アジア転職読本
(2012/07/20)
森山 たつを

商品詳細を見る


COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 10月号 [雑誌]COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 10月号 [雑誌]
(2012/08/25)
不明

商品詳細を見る